BMS少年シロマル君
シロマルの朝は早い。
まだ夜も明けきらなぬ朝四時半に携帯電話のアラームで目を覚ます。
巫女みこナース! 巫女みこナース!
「立直一発」のところでアラームを止める。
その後五分ほど天井を見上げつつ悶々とした刻を過ごしつつ妄想力を高めたのち、
冷蔵庫から瓶牛乳を取り出し、外に出て一気に飲み干す。
「ぷはーっ、早朝の牛乳は最高マル!」
シロマルの語尾は「マル」である。これは自然の摂理である。
シロマルたるもの語尾は「マル」でなくてはならないし、語尾が「マル」でないシロマルはシロマルとは言えないのである。
そんなシロマルの朝の日課は外で目覚めの瓶牛乳を飲むこと。
それからもう一つ。
「さてと……全力疾走マル!」
ヒデオ体操第一である。勿論ロバも一緒だ。
むしろロバも一緒に全力疾走している辺りが流石だ。
「わ、私についてこれるかーマル!」
しかしロバのほうが速いのでついていけてないシロマル。
それでも最後のシメは当然これだ。
「私の勝ちマル! 完全勝利マル!」
高らかに叫ぶのだが完全に負けている。色々な意味で。
そして10秒足らずの体操の歌を歌い、シロマルの一日が始まる。
<ここでOP>
C’〜SiromaruEdition〜(原曲:C’ / 岡本ひかり)
ある朝目覚め 気づいたのマル
あたしが見てる BMS界(せかい)はまるで
譜面も曲も ホントは何かの 全部真似じゃない?
offではいつも 込み合う飲み屋
お酒の出ない 店はないから
結局いつも エスカレート あーもー馬鹿みたい
私だけのTaQを仰ぐ 私だけの愛に生きる
コピーの世界 さあ抜け出して
キモイ何かのコピー さりげないけどコピー
抜け出せるのよコピー界 ちゃんと何か残したい
誰にも見えない 彼女と一緒 BMS界(せかい)でたった一人のあたし
<OPここまで>
第01話 シロマル登場マル!
シロマルが駅に着くと、ホームにあふれる人、人、人。
何事かと思いながら眺めていると、後ろから声をかけられた。
「いやぁ人身事故だって。困ったねぇシロマル君」
このカッコイイ声の持ち主の名はしょっくしーという。
「あ、しょっくしーさんマル! おはようマルよ!」
しょっくしーはとてもカッコイイお兄さんである。カッコイイから女の子にもモテモテである。
でもカッコイイからといってしょっくしゅーとか言っちゃ駄目だ。勿論触手とも違うぞ。
「シロマル君にいいことを教えよう。電車は今人身事故で止まっているが復旧には一時間ほどかかる模様だ。
つまりこのまま待っていては学校に遅刻してしまう。遅刻するぐらいならゲーセンでも行ったほうがいいだろう?
というわけで駄目学生決定だなおめでとう」
駄目学生、それは人生の墓場。
授業は当然サボり朝から晩までネットゲーム。
外に出るのも面倒になり食事は一日一食食い溜める。
たまに外出したかと思ったらゲーセンに行って散財する日々。
こうなると健全な生活など夢のまた夢となってしまう。
「駄目学生……怖いマル……。しょっくしーさん助けてマル!」
他力本願なシロマルは自分で何とかしようともせずしょっくしーに頼るのだ。
しかし当然しょっくしーは相手にするはずもない。
「残念ながらシロマル君、キミは立派な駄目人間だ。あきらめたまへ」
「酷いマル! 助けろマルよ!」
途端に態度が大きくなるシロマル。これは別に裏音夢と同じ要領ではない。
シロマルとはそういうものなのだ。
「私はこれからスキルポイントを伸ばしに行かないといけないのでね。
シロマル君も後で来たまえ。
……あぁそうそう、空き瓶は貰っていくよ。聖水作成に必要なのでね。ではまた会おう」
そういうとしょっくしーは空飛ぶ青いなまもののようなものにまたがってどこかへいってしまった。
「……仕方ないマル、少し時間を潰して復旧を待つマル。
多少遅刻しても人身事故なら仕方ないマルよ」
一般的な主人公はここらで何かしらのアクションを起こすところだ。
例えば雲形の不思議な乗り物を呼ぶとか瞬間移動するとか空飛ぶとかどこまでもドアを使うとか。
しかしシロマルは一般的でも主人公なキャラでもないので何もしないのだ。
こうして何事も無くシロマルの一日は過ぎていく。
第01話 シロマル登場マル! // End